所得税率シミュレーション!年収別税負担と手取り額計算
所得税は累進税率制度により、年収が上がるほど税率が高くなる仕組みです。しかし、実際の税負担は基礎控除や給与所得控除、社会保険料控除などの各種控除により大幅に軽減されます。年収アップを目指す際や転職を検討する際には、税率の仕組みを正確に理解し、手取り額の変化を把握することが重要です。本記事では、年収別の所得税率と手取り額をシミュレーションし、効果的な節税対策も含めて詳しく解説します。
所得税の基本構造
累進税率制度の仕組み
所得税の計算式
所得税 = (総所得金額 - 所得控除)× 税率 - 控除額
2024年度 所得税率表
課税所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円超330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円超695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円超900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円超1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円超4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
住民税の仕組み
住民税の構成
- 所得割:税率10%(市町村民税6% + 都道府県民税4%)
- 均等割:年額5,000円程度(地域により異なる)
住民税の計算
住民税所得割 = (総所得金額 - 所得控除)× 10%
復興特別所得税
税率
復興特別所得税 = 所得税額 × 2.1%
適用期間
2013年1月1日〜2037年12月31日(25年間)
給与所得控除の仕組み
給与所得控除額(2024年分)
給与収入 | 給与所得控除額 |
---|
180万円以下 | 収入金額×40%-10万円(最低55万円) |
180万円超360万円以下 | 収入金額×30%+8万円 |
360万円超660万円以下 | 収入金額×20%+44万円 |
660万円超850万円以下 | 収入金額×10%+110万円 |
850万円超 | 195万円(上限) |
年収別給与所得控除額
主要年収での控除額
- 年収300万円:給与所得控除98万円
- 年収400万円:給与所得控除124万円
- 年収500万円:給与所得控除144万円
- 年収600万円:給与所得控除164万円
- 年収700万円:給与所得控除180万円
- 年収800万円:給与所得控除190万円
- 年収1,000万円:給与所得控除195万円
年収別税負担シミュレーション
年収300万円の場合
所得・控除の計算
- 給与収入:300万円
- 給与所得控除:98万円
- 給与所得:202万円
- 基礎控除:48万円
- 社会保険料控除:43万円(14.3%)
- 課税所得:111万円
税額計算
- 所得税:111万円×5% = 55,500円
- 復興特別所得税:55,500円×2.1% = 1,166円
- 住民税:(202万円-43万円-43万円)×10% + 5,000円 = 121,000円
- 社会保険料:429,000円
手取り額
300万円 - 56,666円 - 121,000円 - 429,000円 = 2,393,334円
実効税率:20.2%
年収500万円の場合
所得・控除の計算
- 給与収入:500万円
- 給与所得控除:144万円
- 給与所得:356万円
- 基礎控除:48万円
- 社会保険料控除:72万円(14.4%)
- 課税所得:236万円
税額計算
- 所得税:236万円×10% - 97,500円 = 162,500円
- 復興特別所得税:162,500円×2.1% = 3,413円
- 住民税:(356万円-48万円-72万円)×10% + 5,000円 = 241,000円
- 社会保険料:720,000円
手取り額
500万円 - 165,913円 - 241,000円 - 720,000円 = 3,873,087円
実効税率:22.5%
年収700万円の場合
所得・控除の計算
- 給与収入:700万円
- 給与所得控除:180万円
- 給与所得:520万円
- 基礎控除:48万円
- 社会保険料控除:100万円(14.3%)
- 課税所得:372万円
税額計算
- 所得税:372万円×20% - 427,500円 = 316,500円
- 復興特別所得税:316,500円×2.1% = 6,647円
- 住 民税:(520万円-48万円-100万円)×10% + 5,000円 = 377,000円
- 社会保険料:1,000,000円
手取り額
700万円 - 323,147円 - 377,000円 - 1,000,000円 = 5,299,853円
実効税率:24.3%
年収1,000万円の場合
所得・控除の計算
- 給与収入:1,000万円
- 給与所得控除:195万円
- 給与所得:805万円
- 基礎控除:48万円
- 社会保険料控除:143万円(14.3%)
- 課税所得:614万円
税額計算
- 所得税:614万円×20% - 427,500円 = 800,500円
- 復興特別所得税:800,500円×2.1% = 16,811円
- 住民税:(805万円-48万円-143万円)×10% + 5,000円 = 619,000円
- 社会保険料:1,430,000円
手取り額
1,000万円 - 817,311円 - 619,000円 - 1,430,000円 = 7,133,689円
実効税率:28.7%
年収1,500万円の場合
所得・控除の計算
- 給与収入:1,500万円
- 給与所得控除:195万円
- 給与所得:1,305万円
- 基礎控除:48万円
- 社会保険料控除:215万円(14.3%)
- 課税所得:1,042万円
税額計算
- 所得税:1,042万円×33% - 1,536,000円 = 1,902,600円
- 復興特別所得税:1,902,600円×2.1% = 39,955円
- 住民税:(1,305万円-48万円-215万円)×10% + 5,000円 = 1,047,000円
- 社会保険料:2,150,000円
手取り額
1,500万円 - 1,942,555円 - 1,047,000円 - 2,150,000円 = 9,860,445円
実効税率:34.3%
社会保険料の詳細計算
厚生年金保険料
保険料率
- 労使合計:18.3%(本人負担:9.15%)
- 標準報酬月額の上限:65万円(年額780万円)
年収別厚生年金保険料
- 年収300万円:274,500円
- 年収500万円:457,500円
- 年収700万円:640,500円
- 年収780万円以上:713,700円(上限)
健康保険料
保険料率(全国健康保険協会)
- 協会けんぽ:約10%(本人負担:約5%)
- 介護保険:1.6%(40歳以上、本人負担:0.8%)
年収別健康保険料
- 年収300万円:150,000円
- 年収500万円:250,000円
- 年収700万円:350,000円
- 年収1,000万円:500,000円
雇用保険料
保険料率
年収別雇用保険料
- 年収300万円:9,000円
- 年収500万円:15,000円
- 年収700万円:21,000円
- 年収1,000万円:30,000円
年収アップ時の限界税率
限界税率の概念
限界税率とは
年収が1万円増加した時の追加税負担率
年収別限界税率
年収レンジ | 所得税率 | 住民税率 | 復興税 | 社会保険料 | 限界税率 |
---|
195万円以下 | 5% | 10% | 0.1% | 14.3% | 29.4% |
195-330万円 | 10% | 10% | 0.2% | 14.3% | 34.5% |
330-695万円 | 20% | 10% | 0.4% | 14.3% | 44.7% |
695-900万円 | 23% | 10% | 0.5% | 14.3% | 47.8% |
900-1,800万円 | 33% | 10% | 0.7% | 0%※ | 43.7% |
※ 社会保険料の上限到達により限界税率が低下
年収アップのインパクト分析
年収500万円→600万円(+100万円)
- 追加税負担:約45万円
- 手取り増加:約55万円
- 限界税率:45%
年収700万円→800万円(+100万円)
- 追加税負担:約45万円
- 手取り増加:約55万円
- 限界税率:45%
年収1,000万円→1,100万円(+100万円)
- 追加税負担:約44万円
- 手取り増加:約56万円
- 限界税率:44%(社会保険料上限の恩恵)
控除活用による節税効果
各種所得控除の活用
主要な所得控除
- 基礎控除:48万円
- 配偶者控除:38万円(所得制限あり)
- 扶養控除:38万円/人(16歳以上)
- 社会保険料控除:支払額全額
- 生命保険料控除:最大12万円
- 地震保険料控除:最大5万円
- 医療費控除:医療費-10万円(最大200万円)
- 寄付金控除:寄付額-2,000円
年収別節税効果
年収700万円での控除活用例
追加控除の適用
- 生命保険料控除:12万円
- 医療費控除:15万円
- ふるさと納税:10万円
- 合計追加控除:37万円
節税効果
- 所得税軽減:37万円×20% = 74,000円
- 住民税軽減:37万円×10% = 37,000円
- 合計節税効果:111,000円
節税戦略の実践方法
所得分散による節税
家族への所得分散
- 配偶者への事業所得分散
- 専従者給与の活用
- 家族への贈与による運用益分散
時期調整による節税
- 賞与支給時期の調整
- 年末の経費前倒し
- 収入の繰り延べ
投資による税制優遇活用
NISA・iDeCoの活用
- つみたてNISA:年120万円非課税
- 成長投資枠:年240万円非課税
- iDeCo:年27.6万円所得控除(会社員)
不動産投資による損益通算
- 減価償却による帳簿上の赤字
- 給与所得との損益通算
- 年間数十万円の節税効果
法人化による節税
法人化の損益分岐点
- 年収800万円以上で検討
- 法人税率:15-23.2%
- 給与所得控除の活用
法人化のメリット
- 所得分散による税率軽減
- 経費範囲の拡大
- 退職金制度の活用
よくある税率に関する誤解